落魄の月

よしなしごと

ダイマにきました

本日は中村ふみの『なぞとき紙芝居』です

 

 

なぞとき紙芝居 (角川ホラー文庫)

なぞとき紙芝居 (角川ホラー文庫)

 

 

 

 ジャンルとしては人情・あやかしになるんだろうか。主人公は男子高校生。この時点でわりあい中村ふみ的にはめずらしい登場人物。合気道をやっていてけっこう筋肉がついているようです。世界一健全な男子高校生だとか理想的男子高校生だとかいわれております。夏祭りで紙芝居屋が事故に遭い、急遽代打を頼まれたのが町外れの喫茶店の地下にすんでいる紙芝居屋。夢は紙芝居の仕事で納税をすること、という男はわかめだとか地底人だとか浜辺に打ち上げられた海藻だとか「太宰治中原中也とわかめを足して3でわった死体」などといわれていて、その紙芝居は泣く子も黙らす恐怖の物語を夏祭りで披露。その夜主人公の友人は紙芝居の舞台でもあった廃病院で肝試しをするといい、連絡がつかなくなった友人が心配になった主人公と紙芝居屋は一緒にそこへ向かう。一話目は若人が肝試しをして怖がるのを、「わかくていいね〜きゃぴきゃぴしてて」と三十路のおっさんが楽しむ話でした。話の筋立てとしては、紙芝居屋がこういうことじゃないかなと物語をつくる。それを聞いた相手(霊なんかも対象)の心のしこりを取り除くみたいな感じ。紙芝居屋は特異的に霊現象に疎く、『夜見師』のほうで「美大生でまったくといいほどさわりをうけない希有な人材」といわれてたのは多分このひと。役回り的には道化師タイプ。主人公も素直ですれてなくて(ここ重要)健全で、紙芝居屋も一応主人公格だけど道化師タイプということで、キャラクター的には中村ふみの他の作品にはないもの。コメディタッチなのも珍しいかな。

 

結構伏線を残しまくったままとまっているので続きはあるのかないのか。『夜見師』が1巻でおわっても2巻で終わってもいいような作りだったので、何かを学習した結果ああいう筋立てになったかもしれない。こっちは「まだ箱が残ってるので話はつくれます!伏線も特に仕込んでません!」なので。紙芝居のほうは1巻から2巻目への伏線もあったり、まったくこれからの伏線もある。紙芝居屋のおじいちゃんが何者かとか、彼が霊でもいいから一度あってみたいとおもったひとは誰なのかとか。個人的には『夜見師』の続きが読みたいけど、紙芝居屋も結構すきなキャラクターなので、続編はでるにこしたことはないってことですね。