落魄の月

よしなしごと

ようやく読み終わった

全8巻9冊におよぶ長編でした。図書館でかりてきたけど二段組み新書だし厚みもあるしで結構読み終わるのに時間がかかった。

 

龍の黙示録(全9巻)合冊版 (祥伝社文庫)

龍の黙示録(全9巻)合冊版 (祥伝社文庫)

 

  全巻読みたい場合は合本版があるのね。そういえば前回電子書籍版しかない続編はどうやってよめばいいのか、と悩んでいたらkindle for PCなるものがあるそうで。しかし買ったあとに積ん読しそうな気がする。電子書籍積ん読とかもう完全に無じゃない。物質がないと忘れそう。

 主人公の女性は、所謂社会においての女性の扱い、結婚圧力だとかセクハラだとか女性らしさだとか、そういうものに違和感を覚えている。そうやって周囲から異質な存在であったため会社を首になってしまう。次の職を探していたところ知り合いに紹介されたのは鎌倉にくらす作家の秘書の仕事。その作家は不老不死の吸血鬼だという噂があった。作家の正体はイエスから慈悲とともに血をもらい、似姿と不老不死の身体をもった存在で、鎌倉の家でメイドの格好をしてるのは彼の血で形をとったなんだろう、生き物です。んでこの吸血鬼といっても別に昼も平気だし血もいらない単純に不老不死なひとは、どういうわけかヴァチカンと対決することになっていくという。主人公の女性はアラハバギの剣を継承して人間か?っていう感じになり、ヴァチカンからの使者も寝返って(寝返ったというか)、不老不死+古の女戦士の継承者+むちゃくちゃ防御力特化した能力もち(人間)+拝火教僧侶(だいむ昔に死んでる)+ヴェネチアのヴァンピールとかいう戦力で、ヴァチカンを裏からあやつるルシファーと対決するという壮大な、壮大な与太話でした。ほめてますよ与太話。風呂敷広げるならそのくらいの方がいいよね。火力特化型パーティーのなかで一番好きなのは人間なのに人外のひとたちの向こうを張ってた、元モブ敵のひと。この修道士は主人公の女性のことを愛しくおもっているわけですが、不老不死のひとも彼女に対して愛情を抱いており、まぁようするに不毛な三角関係なんですね。で、最後の場面で修道士に対して男が「老いていくのを楽しみにしてる」みたいなことをいうんですが、それに対して「それはいいですね。老後はここで介護してもらいましょう」と言っていて。皮肉じゃなくて、本当に介護してもらうのに便利そうという裏のない言葉。これは、修道士のほうが一枚上手。あとお気に入りは最後の方で戦力外あつかいされてた、ライルくんですね。少年姿だったり少女姿だったりして、少女姿のときはフリルたっぷりのメイド姿だったりゴスロリ姿だったりと、かわいいが命みたいな子でした。「かわいい服があったから買ってきちゃった」とかいってたときは、相手は人間じゃないですが心は同じだなっておもったり。しかしその金はお前の主が人間に身をやつして文筆家として稼いだ金だな。不老不死の存在だろうと作家やって家をもってるなら、確定申告もやってるだろうし固定資産税も払ってるんだろうなぁ。なんかこう、人間じゃないのに人間やってるひとの税金話っておもしろそうだとおもう。中村ふみの『夜見師』の主人公も「生きてる振りをするのには法律はめんどくさい」っていってましたね。霊障がでるからとりあえず所有地になってる固定費がバカにならないし、その土地をほしいとやってくる営業もいるし、家は古びるけど一般人が立ち入ると霊障で体調が悪くなるのであまり修理を頼めないという。

 

んで先日あげてた文庫の主人公は、このシリーズの『水冥き愁いの街』にでてくるヴァンピールくんです。彼をヴァンピールにした男は龍の黙示録の主人公に殺された、ということになってます。んでヴァチカンでの最終戦でこの子は生死不明のままで終わっている。そう考えると全くの別世界ですね。生死不明のキャラが他のシリーズで主人公をつとめるというのは救済策みたいなきもしつつ。この続編を買うか買わないかどうするか。