落魄の月

よしなしごと

「神様は毛玉 オタクな霊能者様に無理矢理こようされました」栢野すばる

 正直にいって、このTLによくみられる長ったらしい副題をつけるタイトルからいってぜんっぜん期待してなかったんですが、中身おもしろかった……。タイトルどうにかしてくださいよ、これ。あと帯、完全に重要なネタバレしている。

 

 そう帯にあるように主人公は死んでしまったのだ!!!!!!(これ中盤以降にでてくる大事なところ)。そうしてたまたま散歩していて通りかかった神様が慰めようと近寄ったら、うっかりくっついてしまい、元サラリーマンと毛玉神様の融合体ができあがったのである。毛玉さま、くっついた衝撃で色々記憶が吹っ飛んでしまったようで困っていたところ、毛玉、もというちの守り神ですと名乗り出てきたのは美青年霊能者。守り神がいないと仕事にならないし、それ離れないんで、一緒に住んでね、といわれ主人公はお祓いの場にひっぱりだされ、毛玉のブラッシングとシャンプーを生業にすることに。

 と、ここまでは結構みるかもしれないけど、ここからもう一歩踏み込んだのが評価が高い。それは神様・しろと雇い主であるところの忍の関係である。忍はできうるかぎりのお祓いは受けたいとおもっている。けれど自分の力が足りずに歯がゆい想いをしている。ひとびとの信仰がうすれ、しろと忍の力はどんどん弱まっていき、忍がどれほど願ってもしろの力は弱りはしても強まりはしない。一方のしろは、忍がしろのことを信じていないという。しろはお祓いの便利な道具ではなく、信じてもらうことによって力をだすことのできる神であると。このふたりのすれ違いを、お人好し主人公が間にはさまってひっぱたいたり引きずったりしながらどうにかこうにか理解させていく。

 

 毛玉かわいいでしょ!美青年いいでしょ!おいときましたよ!でおわってないで、ちゃんとキャラごとに役割があり、全体的な話をきちんとまとめられているのがすごくよい。ていうかやっぱりタイトルをどうにか。

 

 個人的につぼだったのは、「給料振り込んどいたよ」っていわれて八百万の振り込みを確認した主人公が「もっと常識的な額にしろ!所得税とか所得税とか大変なんだぞ!」ってくってかかる場面。なんて現実的な主人公なんだ。地に足をついたキャラだなって平凡だけどバランスがいいな、って感じるエピソードでした。