落魄の月

よしなしごと

『怪奇編集部『トワイライト』』瀬川貴次 

 新しいレーベル・オレンジ文庫でさえオカルトものを書く瀬川貴次の業とはと考えてしまうけれど、やっぱり長年やってきてうまいとおもわされるものだった。

 主人公は神社の息子。怪異現象によく逢うことは、同じ大学に進学した幼なじみもしるところ。彼が大学の先輩から紹介されたのは、彼の鬼門でもあるオカルト専門誌。心霊写真・UMA・開運グッズと手広く扱う雑誌の取材の先々で、であうオカルトの数々をかく連作小説。

 怪奇現象がやたらと現実的なのが他のオカルト系ライト文芸とはちょっと違うところ。現実的というか身体的というか。主人公を死んだ恋人と思い込んだ死霊は、主人公の乗るスワンボードに同乗しようと一緒に乗っていた友人に足蹴にされて阻止され、死者の祭りに招かれるという現象が経文の書かれた開運グッズの下着を左前に着たのが原因だったり。

 やっぱりオカルトがうまいんだなーとしみじみと感心しました。